子龍と飛燕 趙雲と張燕の話

趙雲と張燕は共に常山郡真定県の出身なので、こういうこともあるかと思い書いた。

子龍と飛燕

―――常山郡

小高い山に攻め寄せる官軍。

それを丘の上から見ている黒い影。

?「まーた、来やがったぜ、こりもせずに」

?「仕方ないだろ、あれも奴等の仕事だ」

?「なら、とっとと休ませてやろうぜ!」

丘の上から駆け下りてくる2騎の武者。

その後に黒山賊の軍勢がついてくる。

一人は二刀流を掲げて、一人は長槍を束さえて先頭を競うように駆け下りてくる。

官軍の武将がその姿見て

官軍「来たぞ、やつらが」

二刀流姿の若者の大アップで。

「張飛燕!!」

長槍を抱えた若者が大アップで。

「趙子龍!!」

張燕「いっくぜええええ!!」

趙雲「参る」

官軍の中に突入して縦横無尽に暴れまわる二人にたちまち浮き足立つ官軍。

その後に襲い掛かる黒山軍。

たちまち劣勢に陥る官軍。

官軍「ひるむなぁぁ、あの二人だ

あの二人を狙え!!」

しかし、とてもじゃないが太刀打ちできる勢いではない。

官軍「くそ、下がるんじゃない!!

お前ら官軍としての意地はないのかぁ!!」

張燕「なら、お前がみせてみな」

いつの間にか目の前にいる張燕。

刀一閃、辛うじて受け止める。

その姿を遠目に見て趙雲苦笑。

趙雲「相変わらず、素早い」

官軍「くそっっ!」

反撃しようとするが、それよりも前に張燕の刀が官軍の武将の首を獲る。

兵士「お、御大将!!!」

張燕「お前らは、逃げてもいいんだぜ」

くい、と官軍の兵士たちに逃げ道を示す張燕。

完全に崩れ逃げ出す官軍。

逃げていった官軍の後で張燕の脇につく

趙雲「あえて逃がしてやるか

相変わらず甘いな」

張燕「そう言うなよ

いちいち殺すのが面倒なだけだ」

趙雲「ふん、いいだろう

これで俺たちの名は

ますます天下に轟くだろう」

張燕「ま、そういうこった」

ナレーション(適当に切って可、事情説明も兼ねています)

「光和七年〔西暦184年〕

全国で蜂起した太平道の乱は漢王室を揺るがした。それにともなって各地で漢王朝の支配に不満を持った異民族や豪族、農民、盗賊といった者たちも郷里を捨て流民化するか、あるいは蜂起するなどしていった。

一気に流動化していく社会情勢の中、次第にこういった者たちを束ねて独立勢力を築き上げていく者が現れ始める。

乱世の始まりである。

そんな乱世に乗じた者たちの中に、

黒山衆

と呼ばれる勢力がある。

冀州の常山郡を中心に中山、上党、趙郡、河内一帯の賊や流民たちを従えた彼らは、百万を称する衆を束ねた一大勢力と化していた。

彼らを束ねる首領が、黒山の飛燕こと張燕。

そして、彼を補佐するのが黒山の子龍こと趙雲。

共に常山郡真定県の出身である」

勝利の宴会を開いている黒山衆。

一人酒を飲みながらも醒めているように見える趙雲。

そんな様子を見て張燕が。

張燕「お、どうしたい、子龍よ

まだ飲み足りないのか?」

と酒を趙雲の杯に注ぐ張燕。

趙雲「いや、そうではないが

なんとなく物足りなくてな」

張燕「官軍どもか」

趙雲「ああ、あんなものなのか?

漢朝とは?」

張燕「おー、怖ええ怖ええ

戦い好きは強い者好きは

相変わらずだな」

趙雲「だからお前に従っている」

―――常山真定県

樹の枝に穴の開いた銭を吊り下げ、それを突き通す修行をしている趙雲。

一心不乱に修行をしている目の前に、樹の上から飛び降りてくる張燕。

趙雲「!?」

すんでのところで槍を止める趙雲。

目の前でようやく止まった槍の穂先を驚きもせず、ニヤニヤ笑いながら趙雲を見つめる張燕。

張燕「よお、子龍」

一筋の冷や汗が流れる趙雲。

なんとか冷静さをたもちながら。

趙雲「いきなり、なんだ」

張燕「これを見ろよ」

と一個の木簡を取り出す張燕。

『蒼天已死 黄天當立 歳在甲子 天下大吉』

趙雲「これがどうした?」

張燕「ついに来るんだよ!

俺たちの時代が

あの鉅鹿の黄巾どもが全国で蜂起するんだってよ」

趙雲「ふむ」

張燕「わからねえか?

これでもう上の奴等はガタガタだ

乱世だよ、乱世が来る

力次第でのし上がれる

まさに俺たちの時代が来るんじゃねーか」

張燕「俺はもう仲間たちに声をかけた

これにお前が加わってくれりゃ百人、いや千人力だ

なあ、一緒に天下へ討って出ようぜ」

趙雲合点がいったようにうなずきながら苦笑気味に。

趙雲「天下には興味がないが

全国の強者どもと槍を交える

機会をくれそうだな」

張燕「ああ、いやってほど戦わせてやる

なんなら漢土の果てまでな!!」

―――洛陽

大将軍何進、竹簡を床に投げ捨てる。

何進「また敗れただと!!」

臣下「は……あの張燕と趙雲とかいう輩(ともがら)の勢いは如何ともしがたく」

何進「くそっ、盧植らの軍はどうした? 皇甫嵩は? 朱儁は?」

臣下「未だ、黄巾どもにてこずっておりまして……」

何進「なんとか、できんのか。奴等は司州の河内にまで現れているというではないか」

そこに宦官らしき性格の悪そうな朝臣が現れる。

何進嫌そうに。

何進「蹇碩か、宦者が軍議の席になんの用だ?」

蹇碩「大将軍が思わぬ鼠賊に苦戦と聞きましてな」

何進「それがどうした」

蹇碩「なに、少々知恵をお貸ししたいと思いましてな

古来、朝廷には位打ちと申す手管がありまして

お耳を拝借」

二人のヒソヒソ話

黒山衆の宴の続き

酔っ払った配下が、絡んでくる。

配下「なあ~ おかしらぁ」

張燕、一瞬嫌な顔を見せつつも如才なく答えてやる。

張燕「なんだ?」

配下「なあ、お頭と子龍の旦那。

どっちが強いんですかい?」

はっ、と張燕を見る趙雲。

その気配に緊張する周囲。

趙雲「そう言えば、お前と戦った事はなかったな」

張燕「まあ、今はそれどころじゃねえだろ?

俺たちが戦わなきゃならん奴等はいくらでもいる」

と、なんとかまとめようとする張燕。

張燕としては趙雲との戦いは避けたいが、趙雲はその問いかけに興味を持ったままだ。

少し不穏な気配が二人の間に流れる。

と、そこへ。

配下「おかしらあああ、大変だ!」

少しホッとしたように張燕。

張燕「どうした!?」

配下「きゅ、宮廷から勅使が来やがった!」

張燕さすがに驚く。

張燕「なんだと!」

勅使「では、よい御返事お待ちしておりますぞ」

勅使が去ったところへ場面転換。

張燕、少し毒気を抜かれたように。

張燕「へ、へへ……俺が平難中郎将だと」

趙雲「そんなの罠に決まっているだろう?」

張燕「だがよ、ある程度、役人や官位を任命するのも許すってよ

こりゃ、事実上、今の俺たちの縄張りを認めるって事だろ?」

趙雲「冗談じゃない

お前はこんなところで満足する男なのか?」

少し趙雲を疎ましそうに。

張燕「だがな、俺たちもな常山で戦ごっこしているガキじゃねえんだぜ?

百万の手下どもを養わなきゃならねえ立場だ

手下の中には女子供づれも多い」

趙雲「戦いをやめる気か、飛燕?」

目を細めて張燕を睨む趙雲。

それに対して殺気を漂わせる張燕。

両者の間に思い浮かぶ、先ほどの手下の言葉。

配下「なあ、お頭と子龍の旦那。

どっちが強いんですかい?」

張燕、すっと殺気を抜いて。

張燕「やめよう

このことは考えさせてくれ」

趙雲「あ、ああ

そうだな」

と張燕の前を去る趙雲。

その背中に再び殺気を漂わせる張燕。

翌朝、黒山衆を集めた前。

張燕「夕べの漢朝の申し出だが、俺は請ける事にした

今日から俺は平難中郎将で、俺たちは官軍だ」

どよめく黒山衆。

はっと張燕を睨む趙雲。

張燕「ひとまず戦いは終わりだ

そして俺たちの縄張りは正式に俺たちのものになった!」

うおおお、と大喜びの黒山衆たち。

もともとただの賊だけでなく流民の集合体である黒山衆の中には女子供や家族連れの者たちも多くいるのだ。彼らにとって縄張りの安堵と戦わなくていいのは何よりホッとする知らせであったに違いない。

張燕「それから、もうひとつ知らせがある

官軍になったついでに、

前から俺たちと組みたがっていた公孫讚を助けてやる事にする

義勇兵を1万、公孫讚に貸してやる

それを率いるの子龍、お前だ」

ようやく趙雲を見る張燕。

しばらく見詰め合う二人。

趙雲「……そういうことか。飛燕」

張燕「ああ」

趙雲「……」

趙雲「……わかった」

数日後、義勇兵を率いて張燕の下を去る趙雲。

その姿は寂しげである。

―――公孫讚陣営

趙雲「趙雲、字を子龍と申す

黒山より義兵を率い助勢に参った」

公孫讚「おお、これはありがたい

歓迎いたしますぞ趙子龍どの」

公孫讚陣営の中にひときわ目立つ三人の姿。

劉備、関羽、張飛。

劉備前に進み出る。

劉備「黒山の子龍の勇名、幽州でも聞き及んでおります

劉備、字を玄徳と申します、よろしくお願い申す」

新たな出会いを予感させたところで

FIN

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