人苗 人瓜 人句

ケモミミ萌えモノをやろうとして挫折。

その後、アニメ『けものフレンズ』と『アズールレーン』で、俺の中のケモミミ成分はみんな補完されたので、続きを書くこともない。

上位互換として上書きされちゃってるからね!

人苗 人瓜 人句

いつ見ても「ニンゲン」たちの遺跡には、いかなる理屈も抜きで単純に物質の量に圧倒される。

何か大きな山を切り崩して作ったのだろうか? 四角い建造物は空を覆うばかりに林立し、その外にも内にも自分たちに理解できる少しの物と、いったい何に使うのかすら見当もつかない大多数のものが詰まっている。

かつて世界がニンゲンたちのものだった時代には、ニンゲンたちはこれだけの物質に囲まれて生活していたらしいが、それらを見て回るだけでも一生が終わってしまうのではないだろうか? と心配になってくるぐらいだ。

そんないろいろな思考を囚われながら、になんの解決も導かれる事もなく、ただただ見詰めるしかない状態を、傍から見れば「呆然」というのだろう。

(人句)【イヌ】族のシバは、まさに自分の鼻が見つけ出したその巨大な構造物を前に呆然としてしまっていた。

「おーい、いきなり走り出すなあ……!」

彼が通った事で、辛うじて通れるようになった森から、ぜえぜえと息をつきながら、女の姿が現れる。

細面の顔は色が白く整っているが、わざとらしく眼鏡で覆って。肩までのびた狐色の髪の中から、大きな三角の耳が突き出ている。後ろには彼女の機嫌のいい時に触らせてものうと極上の手触りがする、豊かな尻尾が生えている。彼ら“バケモノ”たちの中では、比較的珍しい(人瓜)【キツネ】族の女であった。

彼らバケモノたちは、二足歩行をしており知能も高く、ニンゲンたちに近い種族であると自分たちでは思っているが定かではない。確かに女たちは、ニンゲンの女に極めて近い容姿をしているが、翻って男たちは例えば(人句)族の男であるシバのように頭部は、ほとんどケモノの犬と同様の姿をしている。

このせいで彼らバケモノたちの間では、自分たちの祖先がかつて世界を思うがままにしていた偉大な種族であるニンゲンなのか? それともニンゲンが絶滅したあとでも生き残っている犬、猫、狐、猿、といったケモノたちから進化した種族なのか、長い間議論の対象となっているのだ。

艶かしい舌を伸ばしながら荒い息をついて、クミホは体温を調節する。

(人句)族も(人瓜)族も発汗機能はあるが、ケモノたちと同じように舌も体温調節に併用している。

「まったく……、いきなり走り出して。私はアンタみたいに体力ないんだから……」

と立て板に水とばかりに文句を言い始めたクミホにシバは、自分が見出した遺跡を指差す。

「あ……」

クミホは黙って、遺跡に見惚れる。

そもそも、彼らが遺跡の探索者をやっているのは学者であるクミホに連れられての事なのだ。偉大なニンゲンたちの遺跡、それもかなり大規模なものを見つけて感動するのは、むしろシバよりクミホの方であった。

「森でもない我々でもないケモノでもない匂いを見つけたのでな」

シバは答える。

人句の男たちは、頭部がケモノである犬の形質を大きく受け継いでいるため、他の一族や女たちよりの数万倍鼻が利く。幼馴染であるクミホに従う形で探索者をやっているが、そういう意味ではクミホよりも探索者としての資質は優れたものをもっていた。

「これはすごいね、これだけ高層建築が残っている遺跡なんて初めてだ……」

ずり落ちかけた眼鏡の位置を直しながら、クミホはそんな感想を漏らす。事実、彼らがこれまで目にしたどんな遺跡よりも、それは大きく中身が詰まっていそうな気配と匂いにみちみちていた。

「どのあたりかわかるか?」

シバがそう聞くと、クミホは背負っている袋から、大事そうに筒を取り出して、慎重に中身である大き目の古めかしい紙を取り出して広げた。

その紙には「国土地理院 20万分の1地勢図」と書かれている。

この文字も中の記号もシバにとってはまったく意味をなさない落書きにしか見えないが、辛うじてクミホは単語レベルで読め、記号もいくつかは理解できた。

そしてクミホは筒からもうひとつ真新しい紙を取り出して、それを古地図に重ねる。

ニンゲンたちの遺物である地図は、それそのものがお宝と言っても差し支えのない。いたずらに書き込みなどはではないので、新しい紙を重ねて写し取る形で、これまでの探索の記録を記している。

「んー、だいたいこのあたりだってぐらいはわかるけど。」

と大雑把に地図の1点を中心に指で円をなぞる。

無理もない、彼らがもっている20万分の1地勢図は東京全土を網羅する縮尺の地図であり、とてもじゃないが完全に地図の内容を把握する知識のなか彼らが街単位の精度を認識するのは無理というものだ。

それでも、「このあたり」を探索するには重宝しているのだった。

もっと細かい縮尺を集める事など、とてもじゃないが、彼らの財政状況では手がでない。

「逆に言えば、この遺跡がなんの街なのか名前がわかれば、そこからこの地図に照らし合わせて他の街とか推測できるようになると思う」

実際、彼ら探索者や学者たちの重要な任務のひとつが、見つけた遺跡を古地図に照らし合わせて、現状とかつてのニンゲンの文明の位置関係を明らかにする事なのだから。

「それもそうか」

シバは納得したように巨大な遺跡に目を向ける。

「ならさっそく、調べるとするか」

そう言って、シバは腰に差した頑丈なだけが取り得の片刃反身の蛮刀を抜いて、遺跡を斬るよう振るった。

特に意味はない。

彼にとって探索の安全を祈るようなまじないのようなものであった。

草むらを少しずつ、黒い道―――朽ち果てたアスファルトや石っぽい平らな床―――コンクリートが覆い始める。ニンゲンたちの遺跡はいつだって外界とはまったく違ったもので覆われて、そこだけ別世界を作り出している。アスファルトの割れ目や穴から雑草や木や蔦が這い出してはいるが、ある程度以上の侵食を許さないままだ。

「かなり状態がいいわね」

クミホは森に囲まれているのも関らず、依然として緑化を拒否続けている遺跡を見回しながらそんな感想を述べる。

かつてトウキョウと呼ばれたこの地域は、そのすべてがニンゲンたちの文明圏で、余す所なく地上は彼らの構造物で覆われ、1000万人以上のニンゲンが住んでいたという。それを聞いた時シバなどは「1000万って何万だよ!」と呆れたが、彼らバケモノたちにとっては想像を絶する巨大な文明圏であったらしい。

しかし、今はそのほとんどの地域が樹海と化しており、ニンゲンたちの作った構造物のほとんどは、かつてニンゲンたちに伐採され虐げられ続けてきた植物たちが逆襲するかのように、緑で侵食され尽くしてしまっている。

この遺跡のようにそんな緑の侵略者たちを跳ね返している遺跡は本当に稀であり、踏み入れるたびに人工的な構造物の密度が増えていくのをクミホがキラキラしたような目で見回すのも無理はなかった。

「これこれ! “自動車”ってものだよ! こんなに状態がいいのは初めて見た!」

酸化した鉄と腐った油の匂いがシバにはきつかったが、クミホは尻尾を振りながら道路に放置されたままの自動車に近付いていく。

「はー、この下の四つの車輪が中の動力で回って、馬たちの数倍の速さで走っていくんだ」

「それは、すごいな」

今にも撫でまわしそうになる勢いのクミホの肩を握って自重させながら、シバとしてはそう答えるしかない。その速さがイメージできない上に、もはや動くはずのないものには興味の持ちようがなかったのだ。

「ただ、今はそれに構い続けているわけにもいかんだろ」

とシバが注意すると、クミホは我に返る。

ただ、漠然と探っていくだけでも、相当に時間がかかりそうなほどの遺跡だった。

彼ら二人がまず目をつけたのが、「  原 ジオ 館」と書かれた大きな看板のある建造物だった。周囲の構造物に比べても明らかに保存状態がよく、また、シバの鼻も「中身が詰まっていそうだ」と判断していた。

クミホは確かに学者として遺跡を探索する目的を持っているが、もちろんそれだけを目的に彼らが探索者をやっているわけではない。

ニンゲンたちの遺物で、使い方がわかる便利なものや美しいものなどは学術的価値とは別に、現実的な価値を持つ。つまりは彼らは「宝捜し」も兼ねて、ニンゲンたちの遺跡を探し出し、中を探索するというのが大きな目的となっているのだ。

「直接入る事はできなさそうだな……」

その「  原 ジオ 館」という建造物―――つまりビルの入口はシャッターでしっかりと閉じられており、他の扉らしきものも鍵が閉められていた。

「シバ、なんとかなんない?」

すでに中を調査する気まんまんのクミホは腕を組んでシバを軽く睨みつける。

この目付きにシバは弱い。

どうしてもなんとかしてやろうという気持ちになってしまうのだ。

まずは、シャッターについている取っ手に手を入れて持ち上げようとしてみたが、もちろん動くはずもない。しかし、その手応えで、シャッターそのものは重く頑丈だが、以外に扉や壁などに比べて薄いのが判った。

「ちょっと下がってろ」

クミホにそう言って、シバは腰を落として構える。

そのままシャッターを睨みつけながら、彼はグルルルルと喉を鳴らして、腰に差した蛮刀に手をかけた。

「ガウアッ!」

静まり返った遺跡の中で、彼の獣そのものの咆哮が轟きわたる。

それが二度。

吼えながらシャッターに向かって牙を剥いたシバは、蛮刀で大きく縦にシャッターを切り裂いた。

かれらバケモノたちの特に男たちはニンゲンたちに比べて、体力、筋力などに明らかに優れている。とはいえ、シバの本能に任せた斬撃は、見事であった。

パチパチパチ。

小さくクミホが嬉しそうに微笑みながら拍手。

舌を出して息を整えながら、切り裂いたシャッターの間に身体を入れて押し込んでいく。じわじわとシャッターは建物の内部に押し込まれて生き、二人が通れるぐらいのスペースを作り上げるのであった。

その作業の間、クミホは手際よくマッチ―――これぐらいは彼らの文明でも作る事ができる―――を擦ってカンテラに火をつける。ひとつ。

それをクミホはシバに手渡した。

ぽ。

小さな火音ともに、クミホの指先に火が灯る。

熱量を伴わないその火は、まるで自分の意志でクミホの視界を照らすように、彼女の周囲をついて回る。

(人瓜)族が持つちょっとした特殊能力のひとつだ。

そして、その光とシバの持つカンテラを光源として浮かび上がるのは、物ものモノ、圧倒的なまでの物量であった。

「すご……」

「  原 ジオ 館」の一階は電化製品の店が立ち並び、そのひとつに彼らは入り込んだのであった。

辛うじて、ニンゲンたちの文明について学者レベルの知識を持つ、というより学者そのものであるクミホは、これがニンゲン文明の特徴のひとつである電化製品である事は理解できる。

しかし、それぞれの個体が一体何に使用されるのかまでは、よくわからない。

「これはニンゲンたちの“店”だね。それにしてもスゴイ品数……」

「まるで、そのまま博物館だな」

シバはそんな感想を述べる。彼の知るバケモノたちが経営する店は、こんなに品数があるようなのは見た事もないし、また整然と分類され並べられている様子は、店というよりも彼にとっては博物館という印象を受けてしまう。

「綺麗だな」

シバは、整然とディスプレーされた商品の中から、小ぶりの商品のひとつを手に取る。彼は、これが何に使われるのか知って手に取ったわけではない。

ただ、光沢のある真紅に塗られたそれが、アクセサリーとして綺麗だなと思っただけである。

「クミホ」

シバは、それをクミホの腰のベルトに下げてみた。

探索用に無味乾燥なくすんだ緑系統の服の中で、それはよく映えた。

それを見て、シバは満足そうに頷く。

「ケータイ50……??」

一方のクミホの方は、そんなシバには気づいた様子もなく、夢中になって展示されている商品を見て回ったり、手に取ってみたり、店のそこかしこにあるPOPや商品についているタグの文字などを解読してみようとしたり、なにやら熱心にメモをとってみたりとマイペースであった。

そんなクミホに苦笑しながら、彼女の邪魔にならないように自分のカンテラを取り直して、店内を観て回った。

しかし、ここにあるものはデジタル家電ばかりである。懐中電灯やライターといった、彼らの文明でも理解できて大変貴重なお宝として使われているようなものは売ってはおらず、ニンゲン文明の研究者でもない彼にとっては、すぐに飽きてしまった。

どうもクミホにとっては、大変興味をそそるらしいが、彼としてはわかりやすい遺物や食品や絵や写真のたくさんある本や酒などが並んでいる“コンビニ”の探索の方が好きであった。

そんなわけで、クミホの調査が一段落するまで、彼としては小休止を取る事に決める。

まあ、遺跡調査でクミホがシバの存在を忘れたように没頭するのは慣れているし、そういえば随分前から歩き通し、力仕事のし通しで多少披露もしているようだ。

「ふう……」

と少し注意力が散漫になっていたかもしれなかった。

彼が腰をかけようとしたところに手を付いた途端。

盛大に音を立てて、彼の足元に何かが流れ出した。

「ん?」

「な、なに!?」

いきなりの音にビックリして振り向いたのはむしろクミホのほうだった。

シバは慌てず床に腰掛けるのをやめ、どうやら彼が引っくり返したらしい箱と流れ出したその中身にカンテラの灯りを近づけた。

「おー、こりゃあ……」

普段はあまり感情を表に出さないシバが、珍しく興奮した声をあげた。

「どうしたの?」

つれにつられてクミホはシバに近付いてくる。

「クミホ! どうやら、今回の旅は損しなくて住みそうだぞ!」

とシバはクミホが自分の前に来る前に、手にしたものを彼女にむかって放りなげた。

薄暗い上に、あまり目も運動神経も良くないクミホは、見事にそれをとり損ねて床に落としてしまう。

「ちょっと、こんな所でモノなげつけないでよ……」

とぶつぶつ言いながら、拾いあげるが、

「あはっ」

それを拾い上げた途端に彼女の表情は和らいで、嬉しそうな声まで漏れる。

小さな円筒形の金属の物体は、単三の乾電池であった。

「やったじゃない、シバ」

とクミホはそれを投げ返すと、それは見事にシバの毛皮に覆われた頭に当たって転がった。

乾電池は彼らの文明にとって、唯一理解のできる電源である。それを使ったいくつかのニンゲン文明の遺物を彼らは使いこなす事ができたし、それを使った光源や熱源ぐらいの製品は彼らも作り出す事ができる。

もちろん、それらは一部の金持ちが使っているだけで、普及しているというわけではない。また乾電池それ自体を作る技術を彼らはまだを持っていないため、ニンゲンたちの遺跡から発掘しかない。

そのため乾電池は金持ちや好事家たちからの需要が常にあるので、遺跡探索者がもっとも手軽に換金できるもののひとつとなっている。

「どれだけ使えるがわからないけど、当分、食うには困らんぐらいはあるな」

「だねえ」

と言いながら、シバは自分のランドセルから袋を出して、転がった乾電池を拾い始めた。そんな様子を見てクミホは、自分の作業に戻るのだった。

「よっ、と」

崩れて何段か空いてしまっている階段は、シバのジャンプ力ならば余裕で飛び移れそうであったが、いかにも飛び移った途端に崩れ落ちそうであった。

そこで、シバは比較的しっかりしていそうな、2階の床に直接ロープを渡して上ってしまおうと考えたのであった。鉤のついたロープを真上に放り投げて、策に引っ掛けてみる。それをシバは、だいたい自分の体重ぐらいの負荷をかけて引っ張ってみる。

どうやら、錆や腐食はあまり進んでいないようだ。

少なくとも、

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