眠り姫幻妄 アイドルマスター二次創作

俺いったい何を書こうとしていたんだろ? という記憶さえも遠い頃に書きかけたアイマス二次創作。これ、今読み返しても、何が書きたいのか、どういう着地させるのかよくわからないでいる……。

これ、貴音殺しちゃうのかなー? どこまでやるつもりだったのか、本当によくわからない。たぶん、そのよくわからなさでフォルダに残っていたので、多分続きは書かないし、これ、たぶん各人のご想像に任せた方が良いやつだね!

眠り姫幻妄

大き目の旅行用トランクに丁寧に詰め込まれた四条貴音という死体が、僕の余りにも遅いヰタ・セクスアリスの始まりであった。

まず一目心奪われたのはまず銀という鮮やかな色彩で、それが髪の色だと理解するのに僕の貧しい感性は戸惑う秒の間を必要とした。それでも多少の学生時代に読み漁った本のおかげで、僕の脳は四条貴音の死体を柔らかく包み込む髪から羊水を隠喩出来る程度の働きをし、もう一つ死体を飾る花の役割をしていることぐらいは摑み得る事が出来た。

419日午後1845分の出来事である。

さほど忙しくない時期であったため、定時に帰宅する事を許された僕は、61K家賃5.2万円の散らかっている癖に殺風景な部屋で、四条貴音の死体に出逢った。

それはほんの数秒、たまたま点けたテレビのタイトルも知らない刑事ドラマの1カット。世界中でその瞬間に流された映像画像音声言葉数億数十億のうちでもさほど重要でないものの一つでしかない。心に留める人が何人いるか? アイドル四条貴音にとっても取るに足らぬ仕事であったろう。実際、その刑事ドラマは数週間後には打ち切られたほどにパッとしない、後に名すらも残るかどうかと思われるようなドラマであった。

けれど僕は知ってしまった。そのような瑣末な仕事の中にあってさえ、四条貴音の死体はその身を純正無垢の赤子の如く溌剌と、人生の最期に全ての関わりを断ち切る為に華やかに、その身を彩るのだ。斯くも無造作に。

初めて「四条貴音の死体」というに直面した僕は、その時、なすすべもなく次のシーンに移りやがてCMとなるまで、ただただそのカットを反芻する事しかできなかった。その時はどうする事も出来なかった。

というよりも、その時の僕はそれが事件だという事にさえ気付いてはいなかったし、素晴らしい1カットを理解した事に満足しただけで終わっていた。確か酒は飲まずに眠ったと思う。

「四条貴音の死体」という事件に渦中に巻き込まれるのは、それから六ヵ月後となる。

765プロという小さな芸能プロダクションの広報部が僕の職場だ。勤め始めて2年目。今年は新入社員の採用はなかったと思う、そんなうだつのあがらない芸能事務所だ。特に芸能界に夢があったとか、そういう事情はない。暗澹たる就職状況の中で、文学部という特に有利な点もない学生が必死にあがいていたら、なんとか一つの職というポケットの中に滑り込む事が出来た。本当にただそれだけの、友人に居酒屋で語るエピソードひとつない、人生の一コマでしかない。

「あ、これよろしく」

久々に仕事の決まった所属アイドルの契約書を制作会社と交わして戻ってきて席で一息ついたところで、部長にペラ一枚を渡された。広報部と言っても部長一人、僕一人の小所帯だ。半年前に、事務所を移転してやっと1フロアに社長以下全社員が詰め込まれるという状況から脱出できたばかりだ。

「とりあえず今、青木が宣材用の写真撮影に行ってるから、その間にサイトの仮組みでもしといてよ」

部長が心持ちうんざり顔に見えたのは、そのままの意味に受け取っても良いと思う。

「また所属アイドル増やしたんですか?」

少し呆れた口調で返すという同感の意思表示を返しても、部長の顔色はそのままだったからだ。だいたい、ウチ程度の規模の芸能プロダクションで10人も所属アイドルがいる時点で無理があるのだ。たまたま去年から今年にかけて萩原雪歩という所属アイドルの一人が当たって、なんとか手狭すぎた事務所を引っ越す事が出来たというあたりで、お察しください、だ。

渡されたペラは一枚かと思ったら二枚重なっていた。

まず思ったのは(しかも二人かよ)だった。前述の呆れが二倍になったのと同時に、単純に仕事が二倍になってうんざりする。

「がなは ひびき、と」

聞いた事のある名前だと思ったので手早くググる。Wikipediaが一番上に来たのを見て少し驚く。何かやっていたのかな? で読みながら……。

「あれー、部長。移籍ですか?」

「お?」

と部長がディスプレーの向こうから顔を上げる。

「これ、961プロでかなり金かけて押してた子ですよ。『プロジェクト・フェアリー』とか、確かに聞いたことあります。」

「そういえば、社長がかなり急いてとりかかってくれと言っていたな」

部長は完全に法務畑の人間なので芸能界についてはほとんど関心がない。その下で働いている僕も似たようなものだし、そもそも権利契約関係の書類に追われ、局や制作会社への営業に駈けずり回されていれば、それ以上は深入りしたくなくなるというものだ。

「何が」

プロダクション間の移籍だとすれば、うんざりするほどの権利関係の処理がコチラに回ってくるのは間違いない。移籍したのだからそれを知らせるために局や制作・レコード会社、出版社などへの営業回りも重要だ。もちろんファンクラブへのメールや会報の製作。新しいパンフや資料も用意しなければならないだろう。そもそも今読んでいるWikipedia編集・監視ですら、今度は自分の仕事になる。

ただの新人なら情報も話題性も0から作り上げられるから、時間もそれなりにもらえるだろうが。移籍ともなれば、移籍という情報自体に話題性があるうちに、全てを終わらせておかねばならない。少なくとも公式発表の前に、だ。

「まあ、今日は終電……いや、始発覚悟しておけ」

「ですねえ」

げっそりと二人で肩をすくめあって仕事に戻る。

とりあえずサイトの仮組みを悠長にやっている場合ではなかったようだ。ほとんど略歴でしかない「我那覇響」のペラをめくる。

「しじょう……たかね……、と」

正直に言おう。そのときの僕は、日々の仕事におわれ、僅か半年前の出逢いを忘れかけていた。だから「その名前」を目にしても、気がつかず。Googleでの検索結果に小さなサムネイルからでも判る豪奢な銀髪を見かけるまでは、まったくをもって「失念」と言うべき状態にあった。

「……あ」

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