ビジネスマンたちは、こんな爆笑本を読んでいたなんて! 知られざるゲーム業界本の世界

ビジネスマンたちは、こんな爆笑本を読んでいたなんて!

知られざるゲーム業界本の世界

ゲーム業界の未来を考えては外れ、業界にいらぬ助言をしては無視される、いや『ゲーム批評』の事じゃありません。世の中にはこんなゲーム本もあるのです……。

ゲームの本という言葉を聞いて、あなたはどんな本を思い浮かべますか? ゲーム攻略本ですか? ゲームのムックですか? 今の世の中、本当にいろんなゲーム関連の書籍が出版されている。

そんなゲーム業界を彩るゲーム本の中で、ゲームファンを対象とせず、まったく違ったビジネスマンという読者層を対象にひっそりと存在するゲーム本ジャンルがある。

ビジネス系ゲーム業界本という名の禍禍しいジャンルが、ゲームファンたちの預かり知らぬ、というより知っていてもしょうがないところで定着していたのである。

しかし、たいていはゲームの事なんてわかってないビジネス系のオッサンライターが書いていたり、何をトチ狂ったか経済学の教授がしゃしゃり出て来たりと、実に愉快な有様で制作されているのが常のこと。

その結果、偉そうに未来予測してみたりはするけど、まったく的外れだったり、ゲームファンなら誰が見てもダメだってわかるメーカーを持ち上げてみたりと、もはやギャグの領域にまで到達しているような本が数多く現れてしまっているわけだ。

ここでは、実に余計なお世話な事ながら、筆者のゲーム業界ビジネス本コレクションの中から時代を先取りしようと思ってあさっての方向に行ってしまった、大笑いの本たちを取り上げて愉しんでもらいたい。

郵便ポストが赤いのも、抱き合わせ商法も、みんな任天堂が悪いのだ!

スーパーファミコン任天堂の陰謀

高橋健二・著

光文社

この本が観光されたのは1991年。つまりはスーパーファミコンが発売されて、任天堂が絶好調でこのまま世界でも征服するんじゃないかという勢いの頃。

そんな時代に刊行された本だが、実はこの本出来がいい。ゲーム業界の事をよく調べていて、PCエンジンは8ビットながら、16ビットのスーパーファミコンより速いとか、なかなかシブイ意見が散見される。どうやら著者はけっこうゲーム業界を勉強してこの本を書いているようだ。

しかしながら、各章には「おたくが作ってヤクザが売る」、「任天堂に近い問屋ほど抱き合わせに走る構造」、「山内社長が望む真のクリエイターは絶対に育たない」、「意外に低い『スーパーマリオワールド』の評判」、「衰退した米国自動車産業と任天堂の驚くべき類似」、「知的所有権を踏みにじるソフト業界のリーダー」、「『アタリの教訓』は」などなど、コレでもか! というくらい強烈なタイトルが並びます。そう著者の豊富な知識と調査は、すべて任天堂叩きに費やされるのだ。なんかホノボノのした表紙ですが、なかなかに強烈な任天堂叩き本なのである。その論調の凄まじさは、任天堂バッシング本や記事の中でもなかなか秀逸である。

その結果、アンチでもファンでもいいから必見のハイテンションなオモシロ本になっているのだ。

山内マンセー、任天堂マンセー

任天堂ガリバー商法の秘密

内海一郎・著

日本文芸社

この本『陰謀』と一緒に読むと、

「これ同じ会社ですか?」というぐらい論調は正反対。

「経常利益が富士通に匹敵する脅威」、「超優良企業への快進撃は『CI』から始まった」、「予約殺到! 図に当たる任天堂商法」、「“天才集団”と言ってはばからぬ山内社長の堂々たる気概」

……もう書き写すのヤメていいですか? なんだかうんざりするぐらいのベタほめっぷりであります。

この本を今読むと楽しいのはそこにあるのです。任天堂がかつての勢いを無くした今読むと、実に笑える個所が出てくるのだ。

「ファミコンでネットワークを利用した通信ビジネスの展開」(……もしかしてサテラビューのこと?) とか、先ほどの「“天才集団”と言ってはばからぬ山内社長の堂々たる気概」にしても(その割には今は外部の田尻さんが作った『ポケモン』頼りっすかー? 天才集団はどうした?)などなど、ツッコミ放題。

最後にこの本を今読んで一番笑える個所を紹介しよう。

「ポスト山内は誰なのか?」

すいません2000年になっても、まだあの社長現役っす……。

とりあえず三国志に例えるのがビジネス書のオキテ

ゲーム業界三国志

山名一郎・著

ダイヤモンド社

さー、ついに出ました。自動車業界でも家電業界でも流通でも、ビジネス書の世界ではとりあえず勝手に三国鼎立の時代にされて、『○○三国志』とかいう本をデッチ上げるのがお約束となっているのね。

この本が刊行されたのは、ずいぶんと最近な1997年の事。

ですから、三国鼎立ってのはどのメーカーか薄々察しはつきますわな。そう、セガ、ソニー、任天堂の3メーカーである。

しかし、この手の本のいつも読んでて不満なのは、どれが魏で、どれが呉で、どれが蜀なのか? はっきりしないところだよな。そういった傾向はこの本も例外ではなく、そういう指摘は書かれていない。

ようするに“三国志”というのは名前のキャッチさだけで使われているようなのだ。ま、ほとんど読み捨てされる(故にブックオフとか古本屋にビジネス書はあふれるほど流れる)類の本ですから、そういう戦略は必要なのでしょうな。

しかし、ただ一つその設定に合わせている部分があったりする。三国時代の前の王朝である“漢”だけは設定されていたりするのだから、大笑いである。

なんと、漢の役割は松下の3DO……。スゴイですね、彼岸行ってますね。3DOにはちょっと荷が重過ぎるんではないでしょうか?

さて、この本では、まあ1997年でスクウェアがソニー陣営に組していた時期なので、ほとんど勝負がついた状況として書かれている。しかし、どうもセガとバンダイの合併が破綻するという、誰もが「アホらし」と思った事態までは予測できなかったらしく、セガ・バンダイ陣営がソニーとどう対抗するのか? という形で書かれているのがけっこう香ばしさを醸し出している(笑)

そして、任天堂は負け組としてほとんどおざなりな扱われ方。

でも、これだったら魏がソニー、呉がセガバンダイ(笑)、蜀が昔の漢王朝の後継者(つーか、まんまなんだけど)と主張する蜀として、ちゃんと例えて書いたら面白い本になったかもしれませんなぁ

戦国時代に例えるのもビジネス書の基本であります

ゲーム業界戦国時代

小島郁夫・著

オーエス出版社

三国志と同じように、メーカー物のビジネス本では戦国時代に例えて市場や業界を表現するのはお馴染みの手口です。しかも、三国志とは違って、3国に限る必要がないわけですから、ますますラクチンにキャッチーなタイトルをつけられる。

話がそれたが、この本の見所は、任天堂やセガの創立からの歴史が手際良く説明されているあたりかな。さらに美味しいのは、ゲームメーカーだけでなく、ソフトメーカーにも言及が及んでいるところ。

挙げられているメーカーはタイトーやカプコン、ナムコ、エニックス、テクモ、ジャレコ、光栄(現コーエー)、日本コンピューターシステム、ハドソン……。

いったい何を基準に選んでいるのか、さっぱりわからないのがこの本の魅力であり、ワケのわからなさだ。

この本が刊行されたのは、1994年。しかし、この時期を基準として考えても、何故ジャレコ? 何故テクモ? おいおい日本コンピューターシステムって……。

さらに言うと、既に『ファイナルファンタジー』シリーズで人気を博していた、スクウェアが十把ひとからげに語られているのも不思議不思議。実に香ばしい腐臭を漂わせてくれているのだ。

これですよ、これ。最初に書いたゲーム業界をわかってない人が書くとこうなる、という見本のような実に美味しさを醸し出してくれているのが、この本なのだ。

また、一番末尾に「マルチメディア元年、正念場を迎えたゲーム業界」という章あるのも見逃せません(笑)。

「マルチメディアは音と光の結婚形態」とか「途方もなく広がる可能性のあるマルチメディア市場」とか、どっかの広告代理店に洗脳されてしまった著者のジャーナリスト小島郁夫さんの迷走っぷりが、実にいいドライブ感を見せてくれているのだ。

馬場ワールドその1

ゲームソフト戦争

馬場宏尚・著

ぱる出版

馬場宏尚・1952年東京生まれ。フリージャーナリストとしてゲーム業界、ソフト業界や旅行業に関する本を執筆すると同時に、SF作家「水沢蝶児」として活躍。

なんて素晴らしいプロフィールでありましょうか。誰ですか? 水沢蝶児って、なんとgooで検索しても、1件しか引っかからず(笑)、変なマルチメディア専門学校の講師らしいとしかわかりません。

しかし、この人を馬鹿にしてはいけません。私のようなゲーム業界ビジネス書マニアという、とてつもなく無意味な好事家にとってこの人は、まさにカリスマ、いやそんなカリスマになりたくないだろうけど、とにかくカリスマ的存在であります。というわけでここの文は敬意を込めて「です・ます調」であります。

数あるゲーム系ビジネス書の中でもこの人の本のぶっ飛びぐあいは最高で、そのグルーブ感は他の著者には真似できないものがあります。

この本もタイトルからして、もう「ゲームソフト戦争」です、ウォーズですよ、ウォーズ(笑)、さらに書き出しがスゴイ。

「五月(九七年)二七日の午後、筆者は『セガ・バンダイ』の問題について、日刊ゲンダイのS記者の電話取材を受けていた」

最初からこれです、一人称語りから始まるビジネス書(笑)。それがビル・ゲイツとか孫正義とかの社長さん語り系のビジネス書ならば、一人語りは当然でしょうが、この人はたんなるジャーナリストです。社長でもなんでもないのです。スゲーヨ! 馬場さん。

しかも、取材しているのではなく、取材“されている”という大物っぷりもさすが馬場さんです(笑)、いや俺だけでしょうが「さすが」とこの人の前につけるのは(笑)

そこから始まる序章が「これがセガ・バンダイ破局の真相だ」。その中の各項目のタイトルがナイスです。

「祝福されざる婚約発表」、「獅子と虎の確執」、「合併の仕掛け人は誰か?」……。なんだか「連続殺人事件」と本の末尾に付けたくなるような、素敵なセンスです。さすがはSF作家です。

なんと言っても馬場ワールドの魅力は、こういった小説的なタイトルによるドラマ的な盛り上げ方です。

さらには「ナムコ、同盟の事情」、「思わぬ援軍」、「新しき覇者への道」、「紙すら予測できなかった成功」、「疑心暗鬼(これがタイトルなのよ!)」、「新しき文化への道」など『銀河英雄伝説』ばりの歴史大河小説風のタイトルが並ぶのです。

どうですか? このゲーム業界を妄想とナルシズムで語る、素晴らしき馬場ワールド。

ただ、この馬場ワールド、一つだけ欠点があるのです。

タイトルに比べて中身がツマランのですわ。もっと開き直って小説丸出しにしてくれてもいいのに。その時こそ、真にゲーム出版業界において馬場ワールドが花開くときです。

咲かれてもセイタカアワダチソウ並に迷惑という気がしますが。

これぞ馬場ワールドの真骨頂

セガが21世紀を支配する

馬場宏尚・著

エール出版社

大変です。

我々は、来年はもうセガに支配されてしまうらしいのです。

タイトルほどに面白い内容だったら、この本もっと話題になったかも知れないのに……。

この本でも、やはり馬場ワールドは炸裂し、各章のタイトルでは相変わらずの馬場節が展開されます。というより前述の『ゲームソフト戦争』より前の著書(1995年刊行)なので、馬場ワールドの原点を見られる貴重な機会と書くべきでしょう。

さあ、わくわくのタイトルです。()内は筆者だよ、もちろん(笑)。

「米国はなぜ任天堂でなく、セガに未来を託したのか?(託しません)」

「中山隼雄がなぜ新時代の英雄なのか?(21世紀も見ずに追放です)」

「中山の前に提出された二本の運命の糸(その糸は“ビンボウクジ”という名前ですか?)

「中山の経営は『予知の経営』(残念ながら自分の運命も含めて、予知大外れ)」

「危ない会社から一部上場までの奇跡(そして、もっと危ない会社に)」

「セガの中途採用者には大企業の超大物がズラリ(疫病神リスト)」

「任天堂に殴られっぱなしだったセガの屈辱史(そしては今度はソニーに蹴られっぱなし)」

「セガが21世紀のリーディングカンパニーになれるかどうか、ここ数年で決まる(本当に決まっちゃいました、お見事な分析です)」

面白すぎます。これ以上何をコメントしろと(笑)

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